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相続

遺言書がある場合の相続は?

●質問
代表取締役は父、専務取締役は母、常務取締役が長男である私です。
株はそれぞれ60%、30%、10%所有しています。
その他、会社に関係していない妹が二人います。

父母とも、会社に関係する財産は私に相続させるという
遺言書を書いていますが会社に関する財産が父母の全財産です。

遺言書があっても、
妹二人には相続する権利があると聞きましたがどういう権利でしょうか。
また、権利を行使させない方法はあるでしょうか。

●回答
「遺留分」と呼ばれる一種の期待権があります。
権利を行使させない方法はありません。

●解説

両親の一方が死亡したことによる相続が発生した場合、
(相続放棄をしなければ)原則として、配偶者(夫または妻)が2分の1を、
残りの2分の1を子供で均等に相続します。

遺言書がない場合には、
相続人の全員で遺産の全てをどのように分割するか協議をして配分方法を決します。
今回の場合ですと貴殿の妹さんには
一人当たり6分の1(1/2×1/3)の相続分があることとなります。


遺言書において、「全財産を××に相続させる」とすることも可能であり、
これにより単独で不動産の名義変更や銀行口座の解約などを行うことも可能となります。

しかし、遺言書において一切相続する財産がなかった相続人には
「遺留分」と呼ばれる一種の期待権があり、
これを行使した場合には相続をした相続人は
遺留分に相当する財産を交付しなければならないとされています。

今回の場合ですと貴殿の妹さんには
一人当たり12分の1(1/2×1/2×1/3)の遺留分があり、
遺言によって「全財産を××に相続させる」としていた場合であっても万全ではありません。


遺留分を事前に放棄することは、
家庭裁判所の許可を得て、することが可能とされておりますが、
あえて遺留分を放棄する必要性は乏しく、
自らの意思に基づいて申立てを行う必要があるため、
現実的には遺留分を行使させないことはできないと考えます。


しかし、事業に供している不動産や会社の株式(持分など一部を含む)が
事業に関与していない者に相続させることは、
会社の運営面が著しく不安定となるため、
可能な限り回避することが良いと考えます。


そこで、遺言書だけではなく、
例えば「議決権制限株式」=(特定の株式には株主総会での議決権がない等)や
「取得条項付株式」などのいわゆる「種類株式」を利用した
事業承継対策や生命保険を利用した対策や新しい事業承継税制の活用など、
相続税からの視点だけではなく総合的な対策が必要であり、
紛争が生じることがないように
妹さんにとっても一定の満足を与えるような対策(施策)を立てておくことが重要です。