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不動産

私有地への無断立ち入り

●質問

当社は24時間営業です。駐車場には、塀や囲いはありません。

夜中に酔っぱらって敷地内に勝手に入り、言いがかりを言う人がいます。

敷地内に立ち入らないように言う法的な根拠はありますか。

他のお客様もいるので一律「立ち入り禁止」とすることはできません。

 

●回答

所有権に基づき、好ましくない人の立ち入りを拒絶することはできます。

●解説

所有者はその所有物について管理処分権を有していますから、私有地についても、原則的には所有者がその所有権に基づいて誰に立ち入りを許し、誰に許さないかの決定権限を有していると考えられます。所有権というのは、本来、所有者がその所有する物(有体物)を、法令の制限内において自由に使用・収益・処分する権利を意味するからです(民法206条)。

もっとも、所有者は他人との契約によってその所有物の使用を認めたりすることによって(使用貸借・賃貸借など)、また、一定の相隣関係(隣り合わせの土地所有者は相互に土地使用を認めないといけない場合がある)によって所有権行使の制限を受けたりすることはあります。

しかしながら、ご相談の場合は、私有地への立ち入りについて所有者が他人との契約関係に基づいて事前に許容している訳ではなく、顧客、関係者等、所有者が立ち入りを認める者に対して、黙示的に事実上許容しているに過ぎません。

従って、立ち入りを許容するように求める権利は誰にもありません。つまり、貴社は所有者として好ましくない者の立ち入りを拒絶することができるということです。従って、一旦、立ち入った者に対し退去を求めることも所有権に基づき可能ということになります。

但し、塀や囲いが無い以上、一定の好まざる者を事前に排除することは困難と思われます。

そうすると、事後的に退去を求めるしかないということになりますが、建物や囲われたその敷地であれば、侵入者に退去を求めてこれに応じない場合「不退去罪」という犯罪に該当する場合がありますが、塀や囲いの無い土地だとこれに該当させることもできません。

このような点からは、客商売ということもありますし、あまりに強い態度に出ることも好ましくないと思われます。貴社としては、無用なトラブルにならないよう対応には気をつけるべきでしょう。

現実的な方法としては、夜間にはロープを張るなどの方法で侵入トラブルを未然に防ぐなどが良いと思われます。


不動産

相続財産を調べたら不動産が共有名義だった

●質問
代表取締役が亡くなり、相続財産を調べていたところ
代表取締役個人の所有だと思っていた会社の土地建物は
代表取締役の弟との共有名義でした。

当該不動産は、会社で買い取る予定でしたが、
代表取締役の弟は既に亡くなりその相続人は行方が分かりません。

当該不動産の名義を全て会社にすることは不可能なのでしょうか。

●回答
代表取締役の弟の相続人の行方が分からない現時点において、
不動産の売買契約をすることはできないと考えます。

現在の不動産登記に関する法律の不備であり、
法改正による解決が望まれています。

●解説
共有名義の不動産を貴社の名義とするためには、

①代表取締役の相続人の全員が関与して相続人の名義とする
②弟の相続人の全員が関与して相続人の名義とする
③前記①②で登記名義人となった方々と貴社とで売買契約を締結する

と3段階の手続きが必要となります。

しかしながら、弟の相続人の行方が不明である場合、
前記②の手続きをすることができないことから、
貴社への売却手続きをすることもできず
登記名義を変更することもできないこととなります。

なお、弟の相続人の一部が行方不明である場合であっても、
例えば不在者の財産管理人を家庭裁判所に申立てをすることによって選任し、
相続人の一部と不在者財産管理人とで協議(遺産分割協議)の上、
相続人の名義として売却することも可能ではありますが、
行方不明の状況などや遺産分割の内容、
家庭裁判所の許可など個別具体的な状況によって
売却の可否は異なるものでありますので、
専門家に相談することが良いと考えます。


不動産

賃貸借契約を結びたくないと言われた

●質問
当社商品を展示するため、
商業施設の一角50平米を2年間(更新有り)借りることになりました。

商業施設の所有者からは賃貸借契約ではなく、
広告宣伝契約として交わしたいと言われています。

知人からは借地借家法の適用にならないからやめた方がいいと
アドバイスされましたがどういうことでしょうか。

●回答
借地借家法の適用を受けるか否かについては、
契約の名称や表題によって定まるもの
ではなく、契約の実態によって決まるものであると考えます。

●解説
契約書のタイトルがどうであれ、
契約の内容が建物(一部を含む)の賃貸借契約としての内容である場合には、
借地借家法の適用(保護)を受けます。

この点、建物の賃貸借契約であって借地借家法の適用を受けない契約とは、
例えば一時使用目的の賃貸借契約などでありますが、
このような借地借家法の適用を受けない建物賃貸借契約である場合、
建物の貸主が建物からの退去を申し入れる際における
「正当事由」が不要であるとされており、
借地借家法の適用がある賃貸借契約より
借主の保護が緩和されております。

しかしながら、定期建物賃貸借契約(定期借家)を締結することにより、
契約期間の満了によって契約更新をすることなく
確定的に契約を終了させることができるため、
実質的に貸主からの退去申し入れにおける
「正当事由」は骨抜きとされるリスクがあると考えます。

どのような場合でも、貴社と相手方との契約は、
実際の取引態様を反映した契約を締結することが
大変重要であると考えます。

契約上の有利不利を考慮して
実態とかけ離れた文言の契約書を作成すれば、
後日どのようなリスクがあるか予測不可能になります。